腸腰筋(ちょうようきん)
大腰筋(赤)と腸骨筋(黄)を合わせて【腸腰筋】と呼ぶ。
過去には小腰筋というのもありましたが、退化か進化か現代人の体からは無くなっているそうです。
起始 | 大腰筋深部:L1~L5肋骨突起とT12~L4の側面及び椎間円盤 大腰筋浅部:T12~L4の側面及び椎間円盤 (深部と浅部の間を腰神経叢が通る) 腸骨筋:腸骨窩および腸骨棘 |
停止 | ひとつになって大腿骨小転子 |
神経支配 | 腰神経叢(大腰筋=L1~3、腸骨筋=L2~4) |
作用 | 股関節の屈曲・外旋、骨盤の前傾を介した腰椎の前彎 |
上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉 【腸腰筋】
インナーマッスルの代表格、腸腰筋。この筋が特殊な点は『上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋』であるという事。つまり腸腰筋が上手に使えないと、上半身と下半身のイメージが異なってしまう場合が多くなります。いわゆる下半身太りとかその反対とかです。
腕だけ脚だけなど部分的に動かせそうな体ですが、実際はかなり小さな手足の動作でも体全体の多くの筋肉が協働して動きます。パーツの集まりではなく【ひとつの身体】。身体を【ひとつ】にしてくれているのがこの腸腰筋というわけです。
腸腰筋と殿筋群のおかげで人は二足直立歩行を手に入れたとされていて、人としての姿勢を維持・安定させるために大きな役割を果たしています。
ちなみにこの筋肉を食材でいうとヒレ肉です。四足の腸腰筋はとても小さいですね。
腸腰筋のトレーニング【感じたら大体間違い】
腰椎部分から股関節をまたぎ小転子まで腸腰筋が一斉に縮まると↓この様な姿勢になります。
いわゆる出っ尻です。
感覚に頼る癖があると腸腰筋の作用が中々腑に落ちず、縮めるにしても伸ばすにしても実際の動作で表現するのに時間がかかる場合が多いです。
なぜなら、腸腰筋はじめインナーマッスルの多くは感じられないから。
しっかりと意識をして相当やり込めば感じられますが、アウターマッスルの使いやすさ・感じやすさも手伝ってまず自覚出来ないのがインナーマッスルです。
ものは試しで、腿上げでもしてみて下さい。
多くの人はモモの前面や股関節の外側の筋肉に収縮を感じるはずです。腸腰筋?わかりませんよね?
当然別のところ感じているようでは腸腰筋のトレーニングとしてはいまいち。余計なところの力が抜けるまで極力負荷をかけずに小さな動きでしつこく行なう事が重要です。
極力負荷をかけずに小さな動きでしつこく行なう事を『低負荷高回数』と言います。
とても簡単に低負荷高回数のトレーニングを行えるのが、バランスボールに代表されるバランス系のトレーニングです。
はじめは力で(アウターで)バランスを取ろうとガクガクブルブルしますが、少し慣れると力が抜けるはずです。どこを使っているのかわからない感覚になったら、腸腰筋が使えている証拠です。
腸腰筋に限らずインナーマッスルのトレーニングは『低負荷高回数』。覚えておいてください。
腸腰筋のストレッチ
股関節の屈曲に強く働く筋肉なので、単純に股関節を伸展させればストレッチできます。
が、これでは50点。
これだと股関節レベルではストレッチが掛かりますが、腰椎が前彎そている腰椎レベルではストレッチできていません。
トレーニングほどではないにせよストレッチでも感じにくいのがインナーマッスル。伸ばしているつもりで別の筋肉を伸ばさないよう、起始停止を思い浮かべながら最大限伸ばせる姿勢をとりましょう。正解はこちら↓
股関節を伸展しつつ、腰椎をできるだけ後彎させます。強烈なボディーブローを食らったように腹を引く。相変わらず上部の腸腰筋は感じられないと思いますが、鼠径部あたり、停止部の小転子近くで存在を感じられると思います。
ちなみに、現代日本人で腸腰筋のストレ値が必要な人はあんまりいません。全然使わずに伸び切って固まっている人ばかりですから、負荷をかけない腿上げ(キープか小さく上げ下げ)や、バランスボールなど、「どこも使ってる感じがしなくなる」まで時間をかけて使えるようになっておいたほうが良いでしょう。