目次
構造による関節の分類
滑膜関節
一般的に『関節』として認識されている関節(狭義の関節)。
滑らかな骨端の関節面を更に滑らかに覆う関節軟骨(硝子軟骨)と、関節液で満たされた関節包がある。とにかく『動かすための構造』なのが滑膜関節。

関節軟骨は約70%の水分とⅡ型コラーゲンとプロテオグリカン(糖タンパク)が主成分。血管や神経線維の分布はないので関節自体が痛みの発信源になることはありません。
線維性関節(線維性連結)
コラーゲンなどを成分とする強靭な繊維の束によって連結されている部位。
頭蓋の 縫合、上下顎骨と歯の釘植(ていしょく)がそれにあたります。
歯周病菌などに侵されたら歯は抜けますが、それ以外では当然動かない(動かせない)不動関節です。



軟骨性関節(軟骨性連結)
硝子軟骨結合と線維軟骨結合の2種がある。
硝子軟骨結合の多くは、軟骨部分が加齢とともに骨化して骨結合になります。
例えば、骨幹と骨端の間にある骨幹板や第一肋骨と胸骨柄を繋ぐ硝子軟骨がそれに当たります。


どちらも骨の成長が止まる10代後半~20代前半には骨化します。
線維性軟骨結合は、幼児期の寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)、恥骨結合。
結合以外に【関節円板】と呼ばれるものは全て(椎間板、半月板、顎関節・胸鎖関節・手関節の関節円盤)は線維性軟骨です。




関節円板は骨化するとは限りませんが(する場合もあり)、線維性軟骨結合はやはり加齢とともに骨化します。
ちなみに仙骨と腸骨からなる仙腸関節は未だに定義が定まっていませんが、部分的な滑膜関節と部分的な線維性軟骨結合の両方を持ち合わせている説が現在濃厚。関節腔は非常に小さく動きは極小さいという点は今までと同じです。
凸凹ザラザラな耳状面で接するのに骨化しない点が謎な仙腸関節。他の関節についても曖昧なところはいくらかあります。
人体は未だ謎だらけ。謎なところは謎なまま愉しむのが良いと思います。
形状による分類(全て滑膜関節)
球関節
![]() | 皿、もしくは臼状の関節窩を持つ骨と、球状の関節頭を持つ骨からなる関節。前後・左右と軸を保った回旋が可能な多軸関節。 股関節、肩関節、腕橈関節。*椀等関節は腕尺関節との兼ね合いがあるので2軸に近い |



楕円関節
![]() | 球関節の楕円バージョン。楕円なので回旋は出来ない2軸の関節。環椎後頭関節、橈骨手根関節、中手指節関節(母指以外)。 |



鞍関節
![]() | 馬の鞍(くら)を上下に重ねたような形から鞍関節(あんかんせつ)。楕円関節同様回旋は出来ない2軸の関節。母指の手根中指節関節。 |

車軸関節
![]() | 軸を保った回旋のみ可能な1軸関節。環軸関節、遠位橈尺関節、近位橈尺関節。 |


蝶番関節
![]() | ドアの蝶板(丁番)に似た構造。溝状の凹面を持つ関節窩と円柱状の関節頭からなる1軸の関節。 膝関節、肘関節(椀尺関節)、距腿関節、指節間関節。 *膝関節は屈曲時に回旋できるので顆状関節(浅い球関節)の一面もあります。 |




平面関節
![]() | 平面に近い関節面が滑るように動く多軸関節。関節面が小さいので可動範囲は極めて小さい。 椎間関節、仙腸関節、肩鎖関節、脛腓関節、手根間関節、足根間関節、豆状骨関節。 *仙腸関節、脛腓関節は、関節面の半分が線維性軟骨結合が占め関節腔が非常に小さいので『半関節』とも。 |





*他に、蝶番関節の円柱が円錐状を呈するものを螺旋関節と呼ぶ場合があるようですが、個人差や変性にまで特別な名称をつけるのはややこしくなるだけだと思うので割愛します。
関節は全身にいくつあるのか
ついでなので、滑膜関節を数えてみました。
滑膜関節は全身におよそ180箇所。内訳は上肢に41×2、下肢に36×2、体幹部に39(一対でひとつ扱い。顎関節・肋椎関節・仙腸関節含む)。関節面の数で言えば82+72+77(39✕2ー軸椎)=231。骨の数(大体206)に個人差があるので関節の数にも当然個人差はあります。
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