脊椎の基本
脊椎の機能解剖
正常な背骨(脊柱)は横から見るとこんな感じになっている。
この波打ち方はS字と表現される事が多いが、私としてはゆる~いWと言った方が適切なように思う。(生理彎曲)
ちゃんとした理由があってこういう形になっているので、これがもし真っ直ぐだったりするとウマくありません。
二足歩行
背骨がある動物はたくさんいるがこの様な彎曲した脊柱を持っているのは、二足歩行を行う人間だけ。更に言うと、人間の脊柱を構成するひとつひとつの椎骨は、首から腰までの間に大きさや形が変わっていくのに対して、他の動物の脊柱は、ほぼ同じ形・同じ大きさの椎骨で構成されている。
一部の例外を除いて、哺乳類の頚椎(首の骨)は7つであるという共通点以外随分違う。
背骨解剖
ここでもう少し細かく見ていこう。
脊柱は、7個の頚椎(C)と12個の胸椎(T)、5個の腰椎(L)と5個の仙椎(S)、4~5個の尾椎からなっている。(このうち、仙椎、尾椎は、それぞれひとつの仙骨、尾骨と言われる事が多い)
これ等の椎骨は髄核というゼリー状物質を繊維輪で囲んだ、椎間板を間に挟む形で連なっている。
椎間板はウォーターベッドのようにクッションの役目をしているが、許容量を超えた力が掛かると繊維輪が破れ髄核が突出する。この時、背側へ突出し脊髄やそこから分かれる神経根に損傷を及ぼすと、世に言う椎間板ヘルニアの状態とされる。(ヘルニアとは、突出の意)
椎間板ヘルニアは第3~4、第4~5腰椎の間で最もよく起こり、第5~6、第6~7頚椎でもしばしば見られる。これはつまり前・後屈の動きをおこなうところでヘルニア起るという事。更に右利きの人の場合の腰椎椎間板ヘルニアは左後ろへの突出が最も多い。
ヘルニアはもとより腰痛・肩こりなども二足歩行の代償などと言われる事があるが、1Gという強力な力が常に横方向から掛かっている四足の動物の方が偏った負担を強いられている事は間違いない。
頚椎
頚椎第1、第2。
椎間板が存在しないのが後頭骨と第1頚椎の間、頚椎第1と第2の間。つまりこの二箇所だけは他の関節同様『良く動く』仕組みを持っている。特殊なのでそれぞれ、環椎後頭関節、環軸関節と特別な名前が付いています。
上から見た第1頚椎(C1)。椎骨の本体とも言える椎体がなく環状を呈するので環椎という別名がある。前後の椎弓(ついきゅう)により大きな椎孔をもつ。
青いところは関節面、上関節窩(じょうかんせつか)。ここに後頭骨が乗って環椎後頭関節を形成。頷く動きはここで行われる。
(骨の話をしていると良く出てくる窩と顆。どちらも“か”と読むが、窩はへこみ、顆は出っ張りを意味する。)
第1頚椎(C2)。歯状起(しじょうとっき)という大きな突起が特徴。軸椎という別名がある。突起が環椎の椎孔前部に収まり環軸関節を形成する。
環軸関節を横から見るとこんな感じ。首の回旋はほとんどこの関節で行われている。
第3~6までの頚椎はほぼ同じ形を呈している。棘突起(きょくとっき)の先端が2つに割れているのが、頚椎の特徴。
第7頚椎はまた少し違う形になる。棘突起が長く大きい為、隆椎(りゅうつい)という特別な名前が付いている。下を向いた時、首の付け根がポコっと出っ張るのでそれだとわかる。
大きく上を向く・下を向く時の頚の屈曲は隆椎の長い棘突起を支点にしたテコで行われます。
胸椎
胸椎は第1(T1)から第12(T12)まで形も大きさもあまり変化がない。椎骨の基本形とも言える形。頚椎と同じく青い所は関節面。特徴は横突起(おうとっき)。
2つ並んだところを横から見る。青い所には肋骨が付く。
椎骨と椎骨の間には、椎間孔(ついかんこう)という隙間があり、ここから脊髄神経が出て各器官へ向かう。(頚椎も腰椎も同様)
胸部脊柱の運動は主に回旋でほんのわずかな屈曲と伸展が可能。
腰椎
役割上他の椎骨より強大。第1(L1)~4(L4)まではほぼ同じ形だが第5(L5)だけ若干形が違う。第5腰椎は前方から後方へ行くにしたがって厚さが薄くなっている。
特徴は肋骨突起。胸椎で言うところの横突起のように見えるが、腰椎に横突起は無く代わりにあるのが肋骨突起。この突起はその名の通り肋骨の名残り。
関節面を見ればわかるように、腰部脊柱の運動は主に下部で行われる屈曲(前屈)と伸展(後屈)で、回旋や側屈は殆どできません。
7つの頚椎、12個の胸椎、5つの腰椎と沢山の椎骨が連なっている脊柱ですが、実は大して動かないという事実に着目して欲しいと思います。
背骨は偉い!
ココが偉い!1
各椎骨が連なる事により、各椎骨の椎孔が脊柱管というトンネルを形成する。
ここは大事な大事な脊髄神経の通り道となる。椎骨の連結を真ん中で切った所。黄色が脊柱管。(脊髄及び脊髄神経)赤・オレンジ・ピンクはそれぞれ強靭な靭帯。
ココが偉い!2
頚椎から腰椎まで24個もの椎骨で形成される事により、いかなる動きにおいても頭がグラグラしない。(滑らかな動きが可能)
ココが偉い!3
生理彎曲のおかげでクッション効果を発揮!足から伝わる振動やショックを、頭に伝わる前に上手く分散している。
ムチ打ちをやって頚椎の彎曲が無くなっている人や、腰椎ヘルニアをやって腰の前彎が無くなっている人などは、ちょっと高いところから飛び降りたりすると頭ままでズシーーンと響いてしまう事がある。
かく言う私もムチ打ちを何度か経験したため、頚椎前彎、ひいては腰椎の前彎も減少気味で、ショックを上手く逃がせない真っ直ぐな背骨になってきている。
ココが偉い4
その彎曲は内臓を支える事にも一役買っている。下っ腹がポコっと出ちゃう人や、慢性的な便秘・下痢の人も、もしかすると背骨に原因があるかも・・・。
生理彎曲は人が二本足での生活を選んだ時に生まれている。四足の頃は無かったものだ。だから、人の背骨としてエライのは、キチンとした彎曲を持った背骨なわけです。
人として生きるために生まれた彎曲なのだから、これが減少、もしくは増大すると、その人本来のパフォーマンスを著しく下げてしまう。エライ度30%ダウンという事になる。